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2005年12月15日

耐震強度偽装問題について思うこと

昨日、ついに国会で関係者の証人尋問も行われた「耐震強度偽装問題」について、それをテレビで見た印象も合わせて、ちょっと思うところを書きたいと思います。

まず最初に、今回問題になったマンションを購入され、日々不安な思いをされている方には心から同情します。
早くいい解決策が見つかるといいのですが。
#と言いつつ、苦言を呈したいこともあるんですけどね(後述)。

さて、実際に耐震強度を偽装した姉歯秀次元一級建築士が悪いことであることは疑いの余地がないと思います。
しかし、そう考えている反面、彼の立場がわからないでもない、という複雑な思いもあったりします。それは僕も一介のしがない自営デザイナーだからかもしれません。彼とはやっていることもそのレベルも影響力も違いますが、やはり最終的にクライアントの注文に逆らえないという事情は同じです。

これもあえて言っておきたいと思いますが(僕のクライアントの方が見ていらっしゃるかもしれないので(^^;;)、いま懇意にしていただいている方々は皆、僕の能力やセンスを評価していただいて、こちらの提案などもよくお聞きいただいています。
ですから、僕としてもとても気持ちよく仕事ができているし、結果としていいものを作れていると自負しています。

ただ、かつてはとんでもないことを要求してくる人も中にはいました。

むか〜しのお仕事の話

細かい話になりますけど、デザインの上で重要なポイントにはいくつかありますが、そのひとつに“ホワイトスペース”をうまく取るということがあります。
簡単にいうと余白をうまく(必要十分に)取り、情報(テキスト、画像、写真など)とのバランスを取ることで、情報がスムーズに目に飛び込んでくるようにするということです。なんでもかんでも詰め込めばいいというものではなく、見やすい、読みやすい文書、書籍、ポスターなどは、それがうまく機能しているわけです。
逆に、単にスペースを取ればいいというものでもないんですけどね、言うまでもないことですが。あくまでも“適切な”スペースということで、そのさじ加減がウデ、センスの見せ所でもあります。

ところが以前、ある町の印刷業者から請け負ったポスター(地元のお祭りのものだった)の仕事では、そのようなことを十分考慮して作ったにもかかわらず、すき間があると「もったいないから“なにか”埋めろ」の一点張り。
もちろん、意図を説明はしたのですが全然聞く耳を持たない。“なにか”って言われたって、上に書いたような理由でちゃんと意味を持ったスペースなわけで、それをテキトーなグラフィックかなにかで埋めるわけにはいかないわけです。でも、そんなこと一切聞いてもらえず、最終的には「おまえはこんなこともわからないのか、できないのか!」みたいな話になってしまって。

もちろん、そう言われても一応いい大人ですから(笑)その場は低姿勢で過ごしましたが、家に帰って社長(=妻(^^;;)にことの顛末を半ばブチ切れながら話すと、僕より人間のできている彼女は「そんなクライアントとつき合ってもあなたの得にならないから、言うように仕上げて、もうそことはつき合わないようにしなさい」(^_^;;
ホント、よくできた社長で、感謝しています(^^)

数日後、僕の“作品”とは思いたくない、ポートフォリオに載せたくない、思いっきり“ダサイ”ポスターをひとつ仕上げて、納品しましたとさ(笑)。妥協の産物ってヤツで、いまだに思い出すと恥ずかしいです。

自分の作品であって自分の作品ではない

いま、わざと“作品”と書きましたけど、実は僕がやっている仕事は“芸術作品”ではないので、こういうことが起きることは日常茶飯事なんですね。自分の“作品”ではなく、クライアント様のものなんです。

最初に、“うまくいっている”と書いた現在のクライアント様とのやりとりでも、日々、そういうことは起きます。もちろん、そこからはこちらの意図を説明したり、相手からも意図を説明して頂いたり、という打合せの中で、一番いい“落としどころ”を見つけていくという作業を繰り返すわけです。
そこでお互いに納得したものは“妥協”ではないわけですね。もちろん僕の方から少し譲歩することは多いかな、とは言えますが(^^;;

言うまでもなく、最終的にはその“作品”を見るカスタマーのことを第一義に考えることを忘れてはならないのですけどね。
クライアント様の中には、ときどきご自身の業務をあまりによくご存じになり過ぎるがために、それを第三者(カスタマー、消費者)がどう見るかという視点がちょっと欠けてしまうと言うか、見えなくなっている場合もあるんですね。
それをちょっと指摘して差し上げ、カスタマーフレンドリーな視点へ軌道修正させていただくのも、ある意味第三者でもある---第二者、くらいかな?---デザイナー(というかこの場合プランナー)の役割だと思っています。

クライアントをあえて選ぶ

ちょっと脱線し始めたので(毎度のことですが)話を戻すと、それ以来、僕は自分のこと・能力・センスをある程度認めてくれるクライアント様を吟味するようにしました。
吟味する、なんて言うとこちらが選んでいるようで高飛車な言い分に聞こえちゃうかもしれませんが、人間づきあいと一緒で、やはり自分と波長のあった人・会社とおつき合いしないと、お互いに不幸になるだけなわけで、ムリしてそういう合わない会社とは仕事をしないようにしているのです。

デザイン、とひとことで言いますが、いろんなセンスや趣味趣向があるわけですよね。僕自身は割とカッチリとした精緻なデザイン(文章じゃわからないですね)が好きなので、ワイルドな感じとか、ヘタウマ的なイラストを求めるような人にはお応えできない、と言ったことがあるわけです。
だから、うまく波長のある、お互いに気持ちよく仕事をできる人・会社とおつき合いすればいいだけのことです。

えらそうなことを言っていますけど、実のところ、僕は黙っててもお客さんがどこかからひっきりなしに注文してくる有名デザイナーなわけでもないので、そんな風に“選んでいる”場合じゃないのですが、それでも、先に挙げたようなイヤな思いは二度としたくないので、そんな風に考え、また実践しているわけです。

あと余談ですけど、チラシ、ポスター、パンフレットなどの印刷物の場合だったら、そのまさに“印刷物”を納品するのが契約上の義務・責任なんですよ。ちゃんと仕様通りの印刷物を納品さえできれば、そこで責任は果たせたはず。
でも、たまに、DTPの「データもよこせ」と言ってくるクライアントさんがいて、困惑させられるんです。それ、あとで自分たちで修正したり流用したりしようという意図がミエミエなんですよね〜(^^;; あと最近多いのは、そのデータを流用してホームページを作ろうとする・・・(笑)。
どうしても強行に要求してくるクライアントさんとも、その場合は“手切れ金”じゃないですけど、データをお渡ししてさよならすることにしています。

僕の力を認めてくれ、そういう“ワガママ”を許してくれる社長には、ホント、感謝してもしきれないのですけどね(^^)
ふつう、なんとしても顧客を離すな、と言うのでしょう。

姉歯氏の場合

で、これまでの僕の話というのは言ってみれば全部脱線なわけで(^^;;、姉歯氏に話を戻しましょう。
要するに彼はそういう風にクライアントと“さよなら”することが怖くてできなかったのでしょう。最初に書きましたが、彼の場合こそ、単に法律に違反しているからというだけでなく、住民に甚大な実害が及びかねない“悪事”だったのですから、僕の場合とは影響力の大きさが格段に違うにもかかわらず。

きのうの国会での証人喚問で「妻が入退院を繰り返して」いたので仕事をなくすのをおそれた、なんていう切羽詰まった事情も話されていましたが、彼の場合どうも問題になったクライアント・木村建設との仕事が大多数を占めていたようで、そこから“切られる”と本当に困ってしまったのでしょう。

正直なところ僕が彼の立場だとして、その圧力に屈しきれるかどうか自信がありません。ネットでのいろいろな意見を聞くと、「それはプロの仕事ではない」といった意見も多いですが、あえて言うと、それは言われた仕事をこなしているだけのサラリーマンか、逆にホントに力があって引く手あまたで仕事も選べる人か、どちらかでしょう(あるいは、いい加減なことをクダ巻いているだけの人か、ね(^^;;)。

件のマンションにお住まいの方には「なに言ってんだ、バカ!」と言われかねないのを承知で言うと、この人、最初にこの事件が発覚したときからのぶっちゃけた印象なんですが、なにか淡々としているというか、飄々としているというか、どうもこんなとんでもないことをしでかしたようには見えない、不思議な印象を持ちます。好印象とまではいかないけど、そんなに悪くない人のように思えてしまう。
実はそれでも最初は、「もうちょっとすまなそうな顔をするとか、ウソでも(笑)もうちょっと頭を下げて謝ったらどうなの?」と思いましたが。なにか、事情が明らかになればなるほど、悪い印象がなくなるような気が・・・。
それもこれも、最初に書いたように「ともすれば僕も同じ立場に立たされそうな身分である」という贔屓目なのでしょうか?

これも同情しているわけでは決してありませんが、木村建設の篠塚明元東京支店長だってもしかしたら似たような立場かも知れません。
えてして中間管理職はそうですが、会社上層部からの圧力と、部下への指示(あるいは部下からの圧力)の間で板挟みになっていたりするものです。支店長の個人的な業績向上のための個人的な指図、ということもありえますが、おそらく会社からのコスト削減への強い指示(命令)があったに違いありません。

彼らだけ?

もうひとつ。
こういうことをやっていた(いる)の、姉歯氏と木村建設ヒューザー、そして総合経営研究所、だけでしょうか? あと、イーホームズ日本 E R I も挙げておきましょうか(^^;;
たとえば一級建築士は登録者数ですが31万人もいると聞きます。そのすべてが潤沢に仕事があり、まったく生活するのに困ってない人ばかりというわけではありますまい。
#デザイナーにもいろいろいるようにね(笑)。
建設会社もしかり。コンサルタント会社や建築確認をする会社もそう。

こんなに建築士がいて、こんなに建設会社があって、こういうことをやっているのが、その中でたったひとりだけ、たった一社だけ、と考える方が不自然だと思うのですが。

なにか不祥事が起きると、“雨後の筍”のように同じようなケースが発覚するのが常です。
この際、志のある建築会社や建築士など関係者は、自らを再検査して必要なら名乗り出るなりして、この際「膿」を出し切ってほしいと思いますね。

マンション購入者の責任は?

最初に「同情する」と書いたマンション購入者の話にもちょっとふれたいと思います。

同情はしますけど、「国が損害賠償しろ」とまでいうのはちょっと行き過ぎなんじゃないでしょうか?
国が認めた検査機関が検査したものを購入したんだから、というのがその根拠のようですが、それを言い出すとすべてのことに国家賠償ということになりかねません。クルマだって国が営業を認めている自動車メーカーが製造しているのだから、そのクルマで起こした事故の責任も国がとれ、と言っているような・・・。

建築のシロウトである一般消費者が、マンションの建築施工状況のチェックをしろ、というのは酷な話ですが、あえて冷たく言い放つと、そのマンションを買うかどうかを決めたのはほかならぬ購入者自身です。他に選択肢がなかったわけではないのですし、誰かがそれを買えと強制したわけでもない。

マンション購入者を敵に回す訳ではありませんが(ごくごく身近にも何人かいるしね〜(^^;;)、たぶん一般の人が購入する最も高い買い物である住宅を、その実物を確認しないで買う人の気が僕は知れません(笑)。
本当に自分で自分自身の住む大事な家のことを真摯に考えるなら、信頼に値する建築家を自分で見つけて、ちゃんとした仕事をしている施工会社に依頼し、設計監理(建築中に図面通りかチェックすることです。通常建築家自らが行う)もちゃんとしてもらうという道もあるわけです。

そういう道があるにも関わらず、完成してもいないマンションをパンフレットやモデルルームだけを見て買うのは、やはり自己責任としか言いようがありません。そこで、そのマンションデベロッパーが信頼できると判断したのは自分自身なのですから。そういう判断材料になる情報を集め、吟味するのも自分の責任です。本当に信頼できるデベロッパーを選んでいる人たちもいるわけですよね。
#イヤ、その中にもボロボロ偽装しているところが出てきたりして(^^;;

銀行が不良債権を抱えたときに国が救済したときもそうでしたけど、これを国が税金で救済するというのもちょっとおかしな話かな、という気もします。最初に書いたように、誠に気の毒、ではありますが。
もっともっと困っている人が日本にもいるような気もするし。
まあ、お役人のフトコロに入り込む無意味なお金よりはよっぽどマシな使い道ですかね(^^;;

ものには適正な値段がある

デフレの昨今でものの値段が安くなってきている時代ですが、いいものはやはりそれなりの値段がするものだ、という当たり前の事実が再確認されてもきているようです。
マンションもやはり“安物買いの銭失い”が見事に当てはまった、というところでしょうか。ヒューザーのマンションが破格の安さだったのにはちゃんと訳があったわけです。
もちろん、いままでがあまりに高すぎやっと適正な価格になった、というものもいっぱいあるんですけどね。それはそれとしてね。

とにもかくにも、やはり後ろ指をさされるような仕事は、たとえ法律違反であろうとなかろうと、たとえ人に見つからなくとも、自分の良心に従ってやってはいけないな、と今回の件を他山の石として考えようと思うのでした。

●2005.12.21 追記

実際に問題になっている違法建築マンションにお住まいの方のブログを見つけました。この方のご意見はともかく、勝手言いたい放題のコメンターがいるのには辟易しますね。あんな風に悪く言ってなにがおもしろいのかな?
「揺れるマンション」顛末記

投稿者 Shin : 2005年12月15日 11:19

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コメント

初めまして。
blogじっくりと拝見をさせて頂きました。当事務所の事もフォローして頂いていて・・・有り難うございます。
デザイナーも建築家も芸術家では無く、お客様あっての商売なので、考え方にとても共感できます。
また、私も同じように、とてもいやな思いをした事があります。そして私も生意気なようですが、やはりお客様を選んで仕事をしている事は確かです。苦しい時は歯を食いしばって・・・!
お互いに良い作品をつくれるように頑張りましょう!

投稿者 hidefusa.suzuki. : 2005年12月15日 16:53

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